【動画】【野外セッション】EnSō [Prototype] Ambient Techno

2023年9月23日土曜日

model:cycles 演奏動画 - solo

t f B! P L

新しい演奏動画を撮影しました。

機材はスウェーデンのメーカーElektron(エレクトロン)のModel:Cycles(モデルサイクルズ)

Title:
EnSō [Prototype]

漢字では円窓(えんそう)


茶室等の窓や出入り口に用いられた窓

丸窓は禅の悟りを意味する円相に由来するらしいです。

外の世界に左右されるのではなく、自分の内面、内なる声を聴いて、本来の自分の意識とつながることが、今の自分にとても必要だったので、その想いをこめてタイトルにしました。

[Prototype]=試作品、デモ

音作りにもう少し時間をかければ構成等を作り込めたのですが、熱量、タイミング、ライブ感を優先したかったのでデモ音源的な位置付けにしました。

今後、アレンジを作り込んで完全ver.として改めてリリースする予定?です。

【曲紹介】

今回はTINÖRKSではなくsolo名義

ジャンルはAmbient Old Techno

キック(ドラムのドンッという音色)が1小節に4つ鳴るいわゆる4つ打ちでリズムが構成された90年代に流行したテクノ

フワーとしたパッドの音色やススキが風に揺れる音、虫の鳴き声など現地で集音した環境音も入れているので、コテコテのテクノではなくアンビエント(環境音楽)の要素も入っています。

【撮影した理由】

Model:Cyclesのようなgroove box(グルーヴ・ボックス)といわれる機材を使ってTINÖRKSの世界観とは違う曲を作りたかったのと、こういう機材を使って野外でセッションしている動画をSNSで見てとても興味をもったのがきっかけです。

普段やっているPCでDAW(ダウ)ソフトをメインにした曲制作とは違う感覚で音楽を作りたかったという気持ちが強く、また最近制作したLoFi Chill Hopの「Hotori no Tokini」でも使用した同じメーカーのDigitakt(デジタクト)からの流れでModel:Cyclesに興味をもち、実際に使ってみるととてもわくわくしたので曲を作って撮影しようと思いました。

【撮影場所】

高原の山の上で撮影しました。当日持参した機材はModel:Cyclesの他、レコーダーにzoom R8、Eco flowのポータブル電源、三脚、カメラ、ヘッドフォン、軽食、水筒など。撮影してくれるメンバーの雫と二人で行ったのですが、荷物はかなりの重量でした。

天候は晴れたのでラッキーでしたが、日照りが強くて途中から汗だくで体力的にかなりしんどかったです。


ちなみにModel:Cyclesの持ち運びは100均で買ったクリアケースに入れています。緩衝材的なものはないですが付属品がすべて収納できてコスパが良くて便利。


山の上に着いたら見晴らしが良く、風が心地よかったので、時間とともに回復して撮影を始めました。

【Model:Cyclesについて】

groove boxを知らない方にとって、一見すると楽器に見えないと思いますが、とても性能の良い優秀な機材です。

右側の灰色のつまみを回して音をリアルタイムに変化させて演奏
マニアックな話になるのでポイント解説
(かなりざっくりな内容)

・楽器パートは6つ

・音色はFM音源(誤解を恐れずに言うと質の良いファミコン的な音色が多く入っている。かなり偏った見方...)

*ファミコンを知らない世代の方ごめんなさい...

・16分音符を基本にして最大4小節の長さに各楽器パートを打ち込んでいく

(どのタイミングでどの音程をどのくらいの強さで鳴らすかを決める)

・打ち込んだパートを再生しながら打ち込んだパターンを変更したり、打ち込んだ音をリアルタイムで変化させて曲を展開していく


ピアノやギターなどの生楽器と違う点は、事前に仕込み(打ち込み)が必要なところ。

(打ち込まないでも音を鳴らしたり演奏したりできるけど、とても演奏しづらい)

Model:Cyclesはレコーディングで使うというよりも、ライブ演奏に特化している機材なので、「リアルタイムで音を変化させる」機能がとても充実しています。なので、演奏している側は色々なことができるので楽しいわけです。

【EnSō [Prototype]の制作について】

*マニアックな話なので簡単に解説します。

各楽器パート(以下、トラック=Tと表記)


T1 キック(ドンッという音)と中盤からベース音も同時に鳴る

T2 ハイハット(チキチキという細かい音)

T3 左からポロポロと鳴ってる音

T4 右から鳴ってる持続音

T5 一番最初から鳴るフワ〜とした音

T6 高音で主旋律を奏でる金属的な音

メロディーを奏でているパートはModel:Cyclesにキーボード(鍵盤)をつないで打ち込み。

T6だけ8分音符を基準にして他のパートは16分音符を基準にして4小節の長さで打ち込み。

T1は途中からベースも同時に鳴り出しますが、これは同時に鳴っているように聞かせているだけで、同時に鳴ってはいません。

16分音符を基準にして4小節あるので、1小節に16分音符は16個。4小節だと64個。

つまりひとつの楽器パートに64個の箱があるとして、1番の箱はキックを鳴らして、2番、3番の箱はベースを鳴らす...というようなことをやっています。

これが可能ということは楽器パートは6つではなく、実際はかなり多くの楽器パートを扱えるといういことです。(表現の幅が限りない...)

極端な例でいうと、上記の箱の説明だと1小節に16分音符は16個。4小節だと64個であるのなら箱の数も64個なので64種類の楽器パートを鳴らせることができます。

あと、面白い機能を紹介すると、1番目の箱にドンッというキックの音を鳴らすと設定(打ち込んだ)した後に、その音を48分音符(実際はそんな音符ないですが)で5回鳴らすという「リトリガー」。

動画内1:00の所で「ドドドド」と鳴ってるのがそれです。

こういう演奏をリアルタイムで簡単にできたりするので、Model:Cyclesはライブ特化型マシンになるわけです。

【おわりに】

学生時代に友人から作曲を教えてもらい、あまりよく分からないまま無我夢中に独学で音楽制作にのめり込んでいた90年代。機械的なビートがとてもかっこよく感じテクノミュージックにはまっていました。

KEN ISHII、クラフトワーク、YMO、Robert Milesが好きでかなり影響されたと思います。

KEN ISHII「Jelly Tones」より「EXTRA」
Robert Miles「Children (Dream Version)」
特にKEN ISHIIの独特の音色、リズム、グルーヴ、世界観には雷に打たれたくらい衝撃を感じ、雑誌のインタビューを何度も読んだり、同じような音楽を作りたいといつも思っていました。

Ken Ishii 15th Anniversary – BDPL / Hosei Tatemizu

(↑大学卒業後、サウンド&レコーディングマガジンのKEN ISHIIのトラックを使用したRemixの企画に応募し入選→音源がリリースされたときはほんとにうれしかったなあ...)

テクノミュージックから友人の影響で坂本龍一にはまり、そこからエレクトロニカ、フォークトロニカへと辿り着いて今に至るわけですが、その頃はアレンジにおけるテクノの安易な4つ打ちに嫌悪感を感じてそのような音作りを避けるようになりました。

理由はクラブミュージックとしてオーディエンスを煽(あお)ることに特化しているからで、アレンジがその方向に傾かざるをえないということを理解していたからです。(自分はその役目ではないなあと)

それから時がたち、ここに来てModel:Cyclesを手にしたことで、再びコテコテの4つ打ちテクノを作る日が来るとは思っていませんでしたので、自分自身、驚いています。

それは音楽観が一周しているような気もします。

当時と比べて今の機材はコンパクトかつ高性能なため、できることや表現の幅が格段に上がっていることもあり、Model:Cyclesで気の向くまま好きなように曲を作っている時は、ワクワクして、久しぶりに夢中で音楽作ってるなあと思いました。

これはPCベースの制作が決して退屈という意味ではないです。PCでDAW(ダウ)と呼ばれるレコーディングソフトを使うとできないことがないくらい、ソフト上で何でもできてしまう。

それはそれで便利なので、今では自分の世界観を表現するには必要不可欠なのですが、その楽しさとは種類の異なる「音楽的な楽しさ、奥深さ」がModel:Cyclesでの曲作りにはあるということ。

PCに比べるとできることはかなり制限されるので、制作過程で悩むことも多いですが、逆に考えると制限された範囲でそれをできるように工夫する楽しさがあるわけです。

できないことをアイデアで限界突破した時の楽しさは学生時代に夢中になった音楽制作の醍醐味であり、音楽におけるクリエイティブのひとつだと思います。

それが今回の撮影で改めて気づいたことでした。

と言いつつ、Model:Cyclesだけで曲を制作し続けるのはやっぱり飽きると思うので(自分は飽き性と分かっている)、その時々で作りたい世界観にあった機材、制作方法をチョイスしつつ、自分らしい面白い音や表現をこれからも探求していけたらと思っています。


ここまでお読みいただきありがとうございました。


建水

プロフィール

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横檬 龍彦(ヨコモタツヒコ) 音樂評論家 「すべての作品はそれが存在している時点で評論される価値がある」 世界丸音普及協会理事長 著書「なつかしくてあたらしいひびき」 「まるいおとのつくり方」(絶版) *これはすべてフィクションであり横檬は建水歩星の評論家としての名前である。なお記事内で両者は区別される

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