大阪中之島美術館にて "モネ 連作の情景" 鑑賞しました。100%モネと謳っているだけあってとても見応えのある展覧会。まるで光に輪郭があるかのようにその場の空気感を色彩で表現した作品に圧倒されました。
展示室の照明の具合や各セクションごとのコントラストが考えられていたこと、時代ごとの作品の移り変わりがとても分かりやすかったので美術に関して素人の自分でもとても楽しめました。
印象派の画家の中でもモネは空や水の表現が秀逸で美しいと個人的に感じます。印象派ならではの静止画なのに動いているように見える描き方はまさにその場の一瞬の空気感を絵に採取しているようにも思うからです。
そういう理由から作品に近づいて筆跡など凝視してみるというよりも、少し距離をとって見た方が解像度がぐんと上がるという不思議な感覚にもなります。
また作品の変遷でいうと、日本初公開となる作品"昼食"の描き方が人物をモチーフ(カミーユと息子など)にしている点と晩年の作品に比べて輪郭がはっきりと描かれている点に印象派の前の写実主義の影響が出ているように感じました。
対照的に1900年に描かれた作品"国会議事堂、バラ色のシンフォニー"で夕陽の逆光によって浮かび上がるシルエットは建物自体とその周りの境界線さえもあいまいにし、全体が揺れ動いているようにも見ることができると思います。
特に後者はモネが34歳で第一回印象派展に出展した時、評価を得られなかったという話から当時とても前衛的な表現であったことが伝わります。
主題となるモチーフ自体を曖昧にしてさらに全体的に何を描いているかすら分からないような作品=雰囲気を描くということを評価することは、評価する側にかなりの力を求められると想像できます。
音楽でいえば分かりやすいメロディーや展開をなくして”音”そのものの響きで曲を成立させるようなドローンやアンビエント等の"音響"のジャンルになるかもしれません。
自分が美しいと思いながら描いている作品と世間の評価のズレにどうしようもない葛藤があったかもしれませんが、評価されない貧困時代(本人の浪費癖も関係あるみたいですが…)を抜け連作シリーズから成功が決定的となり画家や観光客が拠点であるジヴェルニーに押し寄せるくらいの熱狂が生まれたみたいです。
印象派を代表する画家のひとりモネの作品を実際に鑑賞できて色彩の表現がどれだけ深いものかを堪能することができてよかったです。目で見えているものではなく心を通して見た光の空気感は時代を超えて伝わる。いつかフランスのジヴェルニーに行ってみたいなあ。
鑑賞後、そびえ立つヤノベケンジさんの"ジャイアント・トらやん"の迫力に圧倒されつつ帰路へ