TINÖRKSのアルバム『ODOMYUNICA』(オードミュニカ)に収録のFullerene [tonelico mix](フラーレン)のトラックを元にしたRemodeled(リモデルド)バージョンを制作しました。
Fullerene -Prototype Remodeled- / TINÖRKS Another Universe
Shizuku Kawahara : Irish Flute, Lap Harp, Metallophon
Yusuke Shimono : Guitar, Sound Effects
Hosei Tatemizu : Keyboard, Synthesizer, Digitakt
Remodeled by Hosei Tatemizu
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スウェーデンの機材メーカーElektronのDigitakt(デジタクト)にフラーレンでレコーディングした各楽器パートを取り込んだ後、音色を加工して曲を再構築しました。(動画に写っている黒い箱のような機材がデジタクトです)
【聴きどころ】
原曲はいくつかバージョン違いがありますが、今回のRemodeled(リモデルド)バージョンは原型を変えるほど加工した音色、コード進行や展開さえも異なります。
曲中で鳴っている音はすべて原曲で使っている楽器パートを使用しています。
また機材の特性もあり、曲のグルーヴ(ノリ)が表現しやすいので、すでにリリースしているバージョンよりもビートが心地いいはずです。(当社比)
後半は特にベースの音数を多くしたり、リズムトラック(ドラム)等のフィルイン(小節が変わる所で変化する部分)を印象的にしました。
というわけで同じ曲でありながらまるでパラレルワールド(異世界)に存在するかのようなもうひとつの「Fullerene」(フラーレン)が誕生しました。
【名義】
名義は「TINÖRKS Another Universe」(アナザーユニバース=異世界のTINÖRKS)にしたのと、タイトルの副題にprototype(試作品)とつけました。今回の試みは「Digitaktだけを使用してTINÖRKSの楽曲を再構築できるかどうか」がテーマでしたので、実験的な要素が強かったためです。
【アプローチの仕方】
Digitaktだけを使うことで「鍵盤的な曲作りの発想」とはまったく違ったアプローチをしなければなりませんでした。機材の仕様に慣れる時間は必要でしたが、音色加工やリズムの組み合わせにおいて直感的に進めていけたので、結果、思いもよらなかった発見がたくさんありました。
普段メインでしているPCを使用した曲作りは始めから終わりまでのざっくりしたデモを作り、楽器を録音しながら展開を考え、細かなところを追い込んでいきます。メリットはアイデアが思いつく限り何でも可能な点で(PCのスペックの限界はあります)、デメリットはできることが多すぎる点です。つまり、何を表現したいのかの核となる部分をしっかりと持たないと曲のエネルギーがブレるし、場合によってはいつまで経っても完成しないという泥沼に入ります。メリットとデメリットが表裏一体になっているわけです。
【制約とクリエイティビティ】
対照的にDigitaktだけを使う曲作りの場合、PCの制作と比べて制約されていることが多くあります。(そうは言ってもDigitaktの場合は工夫次第でできることが多い)
小節数や使用可能なトラック数(楽器パートの数)、エフェクト(音に広がりを出したり等)は限られています。
しかし、クリエイティブな面から考えると、機材に一定の制限がある方が作る人の感性やアイデアを引き出せる可能性が高いということも事実としてあります。
今回のFullereneの曲作りの場合、Digitaktは最大で4小節となり、16音符の数(ステップ数)でいうと16(1小節あたり)×4小節=64ステップの中で、どういう風に音を配置して、展開を作っていくかを考えなければなりませんでした。
具体的にいうと、「この小節ではこの楽器パートの音をこのタイミングで鳴らして」とか、「この音は1巡目には鳴らないで2巡目以降に鳴り続ける」とか、「この音はPAGEボタンを押している間だけ鳴る」とかです。
【ライブ的な曲作り】
今回は音の素材上実行が難しかったですが、音が鳴っている間にその音をリアルタイムで変化させていくということも可能です。
そういう意味では、PC上で緻密に音楽を作っていくというよりも、その場のひらめきやアイデアをすぐに実行していくライブ的なパフォーマンスでの曲作りになると思います。
事実、このDigitaktはグルーヴマシンのカテゴリーに分類される機材で、その場の雰囲気で音楽を変化させていくDJの方も多く使用しています。「自分の表現手段にどういう風に活かすのか」で個性が発揮しやすいのが特徴だと思います。
【終わりに】
2023年に実現したいことのひとつは「今までと違った演奏スタイル」です。今回は実験的にDigitaktだけを使ったTINÖRKSの作品を個人で作りました。今回の試みを応用してバンドでどういうパフォーマンスが可能なのかということを考えています。
もちろん曲の方向性や使用機材を新しく考える必要があるので実現するのに時間がかかりますが、それでも新しいことにチャレンジしたい気持ちがあります。
コロナ禍によって個人個人の価値観や考え方がゆさぶられ、そして社会情勢も混沌とした面がさらに浮き彫りになり、多くの分断が生まれている中で、世界がどこに向かっていっているのか分からなくなっているように個人的に思います。
社会の中で目に見えない抑圧や閉塞感に対して、自分の微弱な力であったとしても表現を通してそれらをぬぐい去りたい気持ちがあります。たとえ色々な価値観が分断によって生まれたとしても、音楽を通して見える景色の本質は希望や落ち着くものであって欲しいです。
個人的な心身の事情で以前のようなライブ活動ができるのかどうか分かりませんが、音楽を通して表現の可能性を信じて少しずつ進んでいこうと思います。
今回制作した『Fullerene -Prototype Remodeled-』原曲との違いを聞き比べながら、ぜひお聴きください。