本記事は中級以上の音楽制作者を対象としたかなりマニアックな内容ですので、ご了承ください。
【はじめに】
目次[非表示]
MIDI端子のないMTRに入れたオケとMIDI端子のついたgroove boxを同期することをずっと考えていて、調べに調べ、試行錯誤の末にようやく同期する方法にたどり着きました。
正直、この方法は需要がないとは思いますが、自分と同じようにもしライブ等で上記の方法をしたいけど、やり方がわからない方がいたらと思い、情報を共有します。
この記事の最大のポイントは「MIDI端子のないMTRとMIDI端子のある機材の同期」です。
2023年10月現在、いくつかのメーカーからMTRの製品が発売されていますが、ほとんどの製品にMIDI端子が付いていません。(たぶん)(逆に昔はMIDIが付いていない方が珍しかった)
ライブでMTRに入れたオケとMIDI機材を同期したパフォーマンスをしたい強い気持ちがありこの方法にたどり着きました。
またこの方法は非常に汎用的ですので、似たような機材でも実現可能な所も重要なポイントです。
*現行品ではない昔のMIDI端子付きMTRを使用すれば問題はすぐに解決しますが、現行のMTRの方が音質や機能が優れていることが多いため、現行製品を使うことが自分にとって最低条件でした。
【目的】
zoomのMTRの現行製品R8に入れた音源(クロックに同期して制作したオケ)とElektron Model:CyclesをArturia KeyStepを経由して同期させます。
MTRを再生するとオケが鳴り、Model:Cyclesのシーケンサーが同期して再生、MTRの停止を押すとModel:Cyclesも停止します。プラスアルファとしてKeystepの鍵盤でModel:Cyclesの音色を演奏できます。
【本記事で使用する機材】
(下記の機材以外でも似たような仕様であればそれで試してみて下さい)
・zoom MTR R8
・Elektron Model:Cycles
・Arturia KeyStep
・汎用的なミキサー
・ステレオピン----TSフォンケーブル(Sync音モノラルケーブル)
・MIDIケーブル
・R8とModel:Cycles(以下MC表記)のoutputからミキサーへ接続するケーブル
・DAWソフト(波形をドラッグして書き出すため)
・R8に入れる同期するためのオケ
(BPMのクロックに完全に同期していること)
(補足)
汎用的なミキサーはR8とMCの音をスピーカーもしくはヘッドフォンからモニターするための用途です。
もしR8を使う場合はUSBでPCに接続して給電すればカードリーダー機能を使えるので作業効率が上がります。
keystepの代わりにYAMAHA YMC10やSONICWAREのsyncとMIDI端子が付いた機材などでも実現可能と思います。
【手順① keystepの設定】
![]() |
MIDI Control Center 設定画面 |
https://www.arturia.com/support/downloads&manuals
Arturiaの公式サイトからMIDI Control Centerをダウンロードし、PCにインストール。keystepをPCに接続して上記画像のように設定する。多分デフォルトが上記設定になっていると思います。(本記事では各設定の細かな説明は割愛します)
![]() |
Arturiaの公式サイト |
【手順② MCの設定、接続】
R8に入れた同期元のオケのBPMが120のためMCで打ち込んだリズムのBPMも120に設定。
MCのMIDI syncを下記に設定
Clk In ON
Clk out ON
![]() |
接続図 |
keystep背面のディップスイッチ(以下、dip sw表記)をMIDIに設定(白色のスイッチを両方上にする)
![]() |
keystepのdip switchの設定 |
keystepのSYNC OUTからMTR R8のInput ch1へ接続
(モノラルケーブルを使用 keystep側はミニピン、R8側はTSフォン)
【手順③ sync音の録音】
R8のトラック8をMIC LINEに設定しGAINの調整をし録音の設定をする。
(クリップしないぎりぎりまでGAINを上げる)
(MCからのMIDIクロック信号がkeystepを経由することでsync信号に変換され、その信号をR8に録音する)
MCの再生を一旦止めシーケンサーを最初の小節に戻す。(停止ボタンを一度押せばOK)
R8の録音を開始後にMCのシーケンサーの再生を開始。
R8に入っているオケの長さよりも少し長くsync信号を録音する。
【手順④ 同期の確認とMCの録音】
ケーブルの接続を変更する。
keystep背面のdip swをSync Inに設定(白色のスイッチの左を上、右を下)
![]() |
接続図 |
keystepのMIDI OUTからMCのMIDI INにMIDIケーブルを接続
R8のPHONES(ヘッドフォン端子)からkeystepのSYNC Inへモノラルケーブルを接続
R8のPHONESのボリュームはMAXにする。
(音量が小さいと信号が不安定になり同期がずれます)
R8のメトロノームを下記に設定
TOOLボタンを押下
METRONOME
- ON/OFF → Play&Rec
- LEVEL → 100
- PAN → Center
- SOUND → Track8(先ほどSync信号を録音したトラック)
- PRE COUNT → OFF
R8のMETRONOMEのスイッチをPHONES ONLYにし、CLICKの方へエンコーダーを回し切る。
(ヘッドフォン端子からはクリックの音しか鳴らないようにするため)
MCのLch outputからR8 ch1 inputへ
(ここの接続はステレオでもOK)
R8の再生をしsync信号が流れたらMCが同期して再生するのを確認する。R8のMETRONOMEのスイッチをoutput+PHONESにするとsync音も聞こえます。
R8のGAINを調整してMCの録音レベルを適切に設定。
R8を停止し小節を最初に戻す。MCも停止ボタンを押下しシーケンスの開始を最初に戻す。(R8の停止ボタンを押下後、MCも自動で停止します)
R8を再生し、MCの音をトラック7へ録音。
(録音は1小節くらいでOK)
【手順⑤ オケの開始位置の変更】
- R8で録音したSyncファイル
- MCの1小節程度のファイル
- オケ
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画像では一番上がsync音、真ん中がMC、最下段がオケ |
![]() |
オケのファイルの前に無音部分が入ることになります |
【手順⑥ オケとMCの同期の確認】
![]() |
接続図 |
(モノラルの場合はトラック1)
トラック7に録音した1小節くらいのMCのトラックは消す。
(オケとの開始点を合わせるためだけに使用したため)
R8の再生を開始するとオケに同期してMCが再生される。
オケが終了し、sync音が鳴り終わるまでMCは同期再生されます。
以上
【補足】
- 同期終了位置はsync音のファイルの長さで調整する
- sync音は途中で延長はできない。ファイルのコピペで延長は不可。延長したい場合は始めからsync音をその長さで録音し直す。
- keystepで鍵盤を演奏するとMCの音が鳴る。keystepでMIDI CHを変更するとMCのトラックに設定した音色で演奏可能。
- MCのパターンを変更する時は小節がずれる可能性があるので慎重に行う。